診療報酬は保険請求業務に必要なものである、ということを以前の記事でご説明しました。
本記事では、より具体的な例を用いて保険請求業務の内容を詳しく見ていきたいと思います。
保険請求業務の内容
保険請求業務は大きく分けて2つに分類されます。それぞれの内容について具体的な例を用いて説明します。
診療費の計算を行う
診療にかかったコストを計上する作業です。スーパーやコンビニで販売されている商品に値段がついているのと同じように、「初めてのクリニックで診察をした」「血液を採取してアレルギー検査をした」といった診療行為それぞれの値段が決められています。
診療報酬で点数が決められているから、その中から該当する項目を選んで診療費に計上するんだね。
その通りです!
例1)「初めてのクリニックで診察をした」場合は『初診料 288点』を算定できます。『初診料』は診療報酬では以下のように定められています。
A000 初診料 288点
注
1 保険医療機関において初診を行った場合に算定する。ただし、別に厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生局長等に届け出た保険医療機関において、情報通信機器を用いた初診を行った場合には、251点を算定する。
2 病院である保険医療機関(特定機能病院(医療法(昭和23年法律第205号)第4条の2第1項に規定する特定機能病院をいう。以下この表において同じ。)、地域医療支援病院(同法第4条第1項に規定する地域医療支援病院をいう。以下この表において同じ。)(同法第7条第2項第5号に規定する一般病床(以下「一般病床」という。)の数が200未満であるものを除く。)・・・・・
https://shirobon.net/medicalfee/latest/ika/r04_ika/r04i_ch1/r04i1_pa1/r04i11_sec1/r04i111_A000.html
はい。読む気が失せますね。基本的には『保険医療機関において初診を行った場合に算定する。』で、例外があるよ〜といった感じで注記がある、という感じです。
例2)「血液を採取した」場合は『血液採取』料を算定できます。血液を採取する技術に対して支払う、みたいなイメージです。美容院で髪を切ってもらったら、その技術に対してお金を支払うことと同じです。
D400 血液採取(1日につき)
1静脈 37点
2その他 6点
注1 入院中の患者以外の患者についてのみ算定する。
2 6歳未満の乳幼児に対して行った場合は、乳幼児加算として、30点を所定点数に加算する。
3 血液回路から採血した場合は算定しない。
https://shirobon.net/medicalfee/latest/ika/r04_ika/r04i_ch2/r04i2_pa3/r04i23_sec4/r04i234_D400.html
こちらは初診料よりは分かりやすいですね。入院している患者には算定できないし、6歳未満の患者から血液採取したら所定の点数に加算して請求していいよ、といった感じです。
このように様々な診療行為に対する点数が診療報酬では定められており、『初診料』『血液採取料』などといった算定項目が電子カルテに登録されています。
診療行為内容に応じてポチポチと算定項目を足していき、診療費を計算します。(レジのバイトなどをした人は想像しやすいと思いますが、「じゃがいも」「たまねぎ」とかがPOSレジ画面に表示されていて、選択すれば費用として計上されていく、そういう作業と考えると分かりやすいです。)
この中で、「これとこれは一緒に請求できないよ!」とか、「これを算定するならこっちも算定できるよ」などのルール(=診療報酬)に則り、カルテの内容を点検して費用を確定させます。実際に点数を計算するのはコンピュータなので、然るべき項目を算定する、と言うべきでしょうか。
以上が診療費計算の具体的な作業です。医療機関の売上、ひいては医療事務の給与に関わる業務のため、ルールに則り可能な限り請求できる点数を増やしたいですね。そのために診療報酬を学ぶ必要があるのです。
レセプト(診療報酬明細書)を作成し、請求する
診療費請求専用の請求書(=レセプト)を作成し、審査支払機関に提出する作業です。レセプトは1月ごとに患者1人に対して1枚ずつ作成して請求します。請求についてもオンライン化が進み、請求専用のシステムが用意されています。
レセプト作成はレセプトコンピュータが専用のフォーマットに記録してくれるため、それを人間が点検するのが主流です。レセプト点検ツールもあります。
(余談ですが、長年医療事務を経験した先輩は紙で点検するのがやりやすいと言っていました。かっこいい。)
点検は紙もしくはPDFの状態で専用のフォーマットに記録された状態で行うのが基本ですが、提出は電子ファイルで行います。レセプト電算ファイルとよばれます。(拡張子.UKEのファイルです。会社の先輩が「ウケファイル」と言っていて、通っぽくてイイなと思いました。)
診療費の計上だけでなく、レセプト記録についてもルールが定められており、これに沿ってレセプト点検を行います。不備があると判断されると査定されてしまう可能性もあるため、しっかり学びたいですね。
レセプト記載ルールは厚生労働省が通知する資料で定められています。参考までにリンクを貼りますが、先に言います。1ページ目で「もう嫌だ、寝る」という気持ちになります。
レセプト記載ルールについても分かりやすく紹介できればと思っておりますので、(吐血)待っていてください。
まとめ
ここまで保険請求業務の具体的な内容を説明しました。難しい用語はありますが、やっていることはコストを計算して請求する、というシンプルな作業です。
- 診療費の計算を行う:診療報酬に則り然るべき項目を算定する
- レセプト(診療報酬明細書)を作成し、請求する:レセコンで記録したレセプトを記載ルールに則り点検し、請求する
次回からは診療報酬の内容に入っていきたいと思います。
ではまた。
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